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ステップ3 遺産分割協議をする

遺言書がない場合。民法は法定相続人とその相続割合について定めています。しかし、これは目安としての分数的割合に過ぎず、具体的な財産を誰が相続するかは、相続人全員による「遺産分割協議」で決定すると定めており、法定相続分と異なる遺産相続を実現するには、遺産分割協議及び遺産分割協議書の作成が不可欠です。他にも次のような理由により協議書が必要となります。

<遺産分割協議書の作成理由>

① 協議の成立を証明し、後日の紛争を防止する目的
② 登記手続きの登記原因証明情報として必要
③ 銀行預金を相続した場合の払戻しに必要
④ 相続税の申告に必要


遺産分割協議の前に注意すべきこと
  遺産分割協議に入るためには、その前段階で、相続人調査・確定、相続財産の調査・確定を済ませておくことが必要になります。遺産分割協議は相続人全員が協議に参加し、合意することが必要なため、相続人を一人でも欠いた協議は無効になってしまいます。また、相続財産の調査を行い、相続財産の範囲と評価額を明確にしておくことが、遺産分割協議に入るための大前提となります。もし相続人の中に次のような方がいる場合は、実際の協議の前に手続きが必要となりますので要注意です。

未成年の子どもとその親が同時に相続人となる場合
  相続人として未成年の子とその親権者がいる場合、両者は遺産分割において利害が対立することになります。そこで、このような場合には、必ず、その未成年の子の特別代理人を選任することが必要になります。特別代理人の選任手続きは、親族などの中で適任者を特別代理人候補者に推薦したうえで、子の住所地を管轄する家庭裁判所に選任の申立てを行い、家庭裁判所が特別代理人の選任審判を行うことになります。

<特別代理人選任申立について>

申立人親権者、利害関係人
申立先未成年者の住所地を管轄する家庭裁判所
申立の必要書類
  • 申立書(別添参照)
  • 申立人(親権者)及び未成年者の戸籍謄本
  • 特別代理人候補者の住民票及び戸籍謄本
  • 被相続人の遺産を明らかにする資料
    (不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書)
  • 利益相反に関する資料(遺産分割協議書案 等)
  • 特別代理人候補者の承諾書
  • ※事案により上記以外の資料賀必要な場合あり
申立費用収入印紙 800円+切手代


相続人の中に認知症の方がいる場合
  次に、相続人の中で認知症の家族がいる場合です、認知症の相続人がいる場合には、遺産分割協議の前に、成年後見人選任の申立をするなどして、認知症の方の代理人となる後見人等を選任することが必要になります。遺産分割協議という重要な財産に関する決め事に、認知症の方を含めて行うのは、どうしても不公平な内容の遺産分割になってしまう恐れがあるためです。このように認知症などで判断能力が乏しいのにも関わらず後見人等を選任せずに行った遺産分割協議は、無効になったり取消しの対象になったりしますので注意が必要です。

<成年後見人選任申立手続き>

申立人本人、配偶者、四親等内の親族、検察官等、任意後見受任者、任意後見人
任意後見監督人、市町村長
申立先原則として本人の住所地を管轄する家庭裁判所
申立の必要書類
  • 申立書
  • 財産目録
  • 特別代理人候補者の住民票及び戸籍謄本
  • 親族関係説明図(※1)
  • 推定相続人の同意書
  • 医師の診断書及び診断書附票
  • 申立人及び本人の戸籍謄本
  • 本人及び後見人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 本人及び後見人候補者の登記されていないことの証明書
  • 後見人候補者の身分証明書
  • 療育手帳のコピー(※2)
  • 遺産目録(遺産分割を前提に後見人選任をする場合)
申立費用申立手数料800円        登記手数料 4,000円
予備郵券 2,800円
鑑定費用 5~10万円(鑑定する医師の指定する金額)


行方不明の相続人がいる場合
  遺産分割協議に際して、相続人の中に行方不明の方がいる場合も、手続きが必要になります。まず家庭裁判所に不在者の財産管理人の選任を申立て、財産管理人を選任します。さらにこの財産管理人が、不在者の代わりに遺産分割協議に参加することで遺産を分割することができます。ただ、遺産分割協議の内容につき、「権限外行為許可の申立」を行い、この許可を得てはじめて遺産分割協議が有効に成立することになります。
  また、不在者の生死も不明で、7年以上の期間が経過している場合には、失踪宣告を家庭裁判所に申立てる方法があります。この場合、家庭裁判所の失踪宣告の審判により、失踪期間の7年経過時において、死亡したものとみなされますので、相続人から除外されることになります。ただこの方法は、相続人の順位に変動が生じたり、代襲相続が発生したりする可能性もあり、問題を複雑にするケースがありますので、注意が必要です。

<不在者相続人に対する財産管理人選任申立手続き>

申立人利害関係人(不在者の相続人、債権者など)または検察官
申立先不在者の従来の住所地の家庭裁判所
申立の必要書類
  • 申立書
  • 不在者の戸籍謄本及び戸籍の附票
  • 財産管理人候補者の住民票または戸籍の附票
  • 不在の事実を証する資料
  • 不在者の財産資料(相続手続の場合は、相続財産に関する資料)
    (不動産登記簿謄本及び固定資産評価証明書、預金残高証明書)
  • 申立人の利害関係を証する資料(相続関係説明図及び根拠となる戸籍謄本類)
  • ※事案により上記以外の資料が必要な場合あり
申立費用収入印紙 800円+切手代


  当事務所では、遺産分割協議の前に必要となる諸手続についてのご相談をお受けしております。初回のご相談は無料ですので、どうぞお気軽にお問合せくださいませ。
 

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遺産分割協議の流れ
① 相続人全員の出席のもとで協議を行う
  相続人全員の出席のもと、誰が、何を相続するのかを決めていきます。民法は、相続人の年齢、職業、心身状態、生活状況その他一切の事情を考慮してこれを定める旨の抽象的な基準の規定があるのみです(民法906条)。
  相続人の一部の者のみで行った協議は無効になりますので、注意が必要です。
  ただし、相続人全員が一堂に会することが不可能な場合、書面の持ち回りによる遺産分割協議も判例により認められています。

  ② 参加者全員が合意に達したら、遺産分割協議書を作成する
  「遺産分割協議書」には、決まった様式はありませんが、誰が何を相続するのかがはっきりわかるように記載し、相続人全員が署名・実印を押印して印鑑証明書を添付します。さもないと、その後の名義変更手続きなどで、思わぬ足止めを喰うことになりますので注意が必要です。

遺産分割方法にもいろいろある
遺産分割協議にもいろいろなやり方があります。具体的にどういう方法で遺産分割をすればよいのか見ていきましょう。

① 現物分割
  「遺産分割の原則的な分割方法で、ある土地・建物は妻に、預金は長男になどと、具体的に決めていく方法です。

  「しかし、分数割合どおりに上手く具体的な遺産割り当てを行うのは、ことのほか大変です。例えば、主な財産がマイホームのみ、というケースは多くありますが、このような場合、家を現実に分割することはまず不可能です。
そういった場合は、換価分割や、代償分割という方法があり、実際に多く用いられている分割方法です。

② 代償分割
  1人または一部の相続人がその不動産を相続する代わりに、自腹でその部分の代償となる金銭を他の相続人に支払う方法です。
ただし、この方法の場合、代償金を支払う人が現金などを持っている必要があり、現実的には困難を強いる場合もありえます。銀行から借り入れをして代償金を支払ったという例もあるくらいです。

③ 換価分割
  不動産はじめ、相続財産を売却して、売却金を相続人で分配する、という方法です。この方法ですと、各相続人に十分な手持ち現金が無くとも、売却金の分配ができるのがメリットです。
  ただ、不動産の売却ですと、例えば実家を失うことになったり、不動産の売却益に対して、譲渡所得税が課税されたり、あるいは、買い手がつかず長期間売れなかったり等のデメリットもあります。

「現物分割」代償分割」換価分割」の比較

 現物分割代償分割換価分割共有分割
方 法
個々の財産をそのまま相続人に分配する一部の相続人に財産を与え、他の相続人に対し金銭支払う債務を負わせる財産を売却などして金銭に換えて各相続人に分配する数人の相続人で持ち分を定めて共有する
長 所
わかりやすさ
財産現物を残せる
公平な遺産分割が可能
財産現物を残せる
公平な遺産分割が可能公平な遺産分割が可能
財産現物を残せる
短 所
相続分どおりに分配することが難しい債務を負担する相続人に支払能力がないと不可能売却の手間と費用がかかる
財産現物が残らない
譲渡益に対し所得税及び住民税がかかる
利用や処分の自由度が低い
共有者に次の相続が起こると権利関係が複雑化する


特別受益と寄与分を考慮に入れて協議をする
  相続人の中で、結婚資金や事業資金などの名目で、生前に被相続人から贈与を受けていた者がいる場合、「特別受益者」として、その者の相続額が差し引かれます。
  また、相続人の中で、被相続人の介護をするなど、特別の貢献をした者がいた場合、「寄与分」として、その者の相続額を増加させることができます。

「特別受益」とは
  故人より生前贈与を受けている相続人と、生前贈与を受けていない相続人とが全く同じ相続分だとすれば、不公平に思う人もいるでしょう。そこで、生前贈与を受けている相続人は、「特別受益」として相続分から差し引かれることがあります。

特別受益になる贈与は、次のようなものです。

  1. 婚姻や養子縁組のための贈与
    新居の費用や結納金、新婚旅行費用などです。
  2. 生計資本としての贈与
    大学の学費、住宅取得費用、事業資金などです。
  3. 遺贈(遺言によって受ける贈与のこと)
    遺贈であればすべて特別受益となります。


また、生前に多くの特別受益を受けている相続人によっては、計算の結果今回の取得分がマイナス(つまりもらいすぎ)、になることもあります。その場合でも、原則として、もらいすぎの部分は返還しなくてもよいことになっています。

「寄与分」とは
  生前の故人との関わりは、人それぞれです。故人の生前に故人の財産維持や財産増加に対し貢献した相続人は、故人に寄与したということで「寄与分」が認められることもあります。故人の事業や農業を継続して手伝っていた相続人や、故人を長年看護した相続人、故人に財産を贈与した相続人などがこれにあてはまります。但し、単なる家事労働だけでは、寄与分として認められないとされています。
  寄与分は遺産分割の対象となる相続財産には含まれず、寄与した相続人は相続財産からまず寄与分を取得して、残った部分を法定相続分で分けるということになります。

  具体的に寄与分がいくらになるのかということは、誰が決めるのでしょうか。実際に寄与がどれくらいあったのか、ということは亡くなった本人にしかわからないことが多く、他の相続人から見れば、寄与分とは思えない部分もあるでしょう。そのようなことも考慮して、寄与分がどのくらいになるのかということは、相続人全員の協議により決めることになっています。
  ただ、存命中の故人との関わりや思い入れはそれぞれ個人によって異なり、各自主観的に寄与の度合いを判断するために、寄与分の合意ができないということも多くあります。何度話合っても一向に協議が成立しない場合には、最終的には家庭裁判所へ寄与分を定める審判を申立て、その席にて決着をつけることになります。

遺産分割協議を上手に進めるポイント
 ① 遺産分割は相続人の妥協の産物です
  遺産分割が法定相続分どおりにきっちり分けられるケースはむしろ少ないです。不動産やその他の動産など分けられないものほど価値の高い遺産だったりする為です。だからといって、自分の相続権に固執するあまり大事な親族のきずなまで失うことになっては目も当てられません。所詮、相続で得る財産など棚からボタモチ、なかったも同然なのですから、ここは相続人同士の譲り合いの精神で、遺産分割協議に臨むよう、肝に銘じていただきたいものです。

 ② 隠し事が災いのもと
  故人と同居、あるいは財産管理を行っていた親族が遺産を隠しているのではないか、という他の親族の疑いの気持ちが遺産分割協議で揉める一つの原因となることがあります。遺産の内容を口頭で説明するのみで終わらせてしまうような行為が、このような疑念を他の相続人に植え付けてしまうのです。 
  たとえ親族同士とはいえ、故人と同居していたあるいは故人の財産を事実上管理する立場にあった相続人は、他の親族に聞かれる前に財産を証拠書類とともに相続人の前でオープンにするぐらいの気構えをもつことが、円満な遺産分割協議のために重要なポイントです。

 

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